株券不発行の原則
株式の譲渡には株券が必要だが・・・
株券は、株主としての地位を表す有価証券です。
有価証券ですから、株式(=株主としての地位)を売る(=譲渡する)際には、買い手に株券を渡す必要があります。
要するに、株券とは、お金と同様、それを持っている人が株主と推定される紙切れのことなのです。
ですから、株主が株券をなくしてしまった場合、大変やっかいな問題になるのです。
まず、株券をなくしてしまった株主は、買い手に渡す株券がないため、持ち株を売りたくても売ることができません。
また、自分のなくした株券を誰かが取得すれば、その人に株主のようになりすまされてしまうかもしれません。
一方、会社としても、誰が株主であるかは株主名簿で管理しているわけですから、印刷コストをかけて、わざわざ株券を発行する必要はないといえます。
現に、多くの中小会社では、株券など発行されていないのが実情です。
そこで、会社が定款で「株券を発行する」と定めない限り、株券は発行されないのです。
なお、上場会社では、平成21年1月に株券の電子化(ペーパーレス)化が実施され、一斉に株券が無効になりました。
株主は会社に「株券はいらない」と言える
前記のとおり、株主としては、株券を持っていると、紛失・盗難といったリスクを負うことになります。
そのため、株券を発行する会社の株主は、会社に対して、「自分は株券を持ちたくない」と申し出ることができます。
株主から、こうした申し出を受けた会社は、株主名簿に、その株主の分については「株券を発行しない」旨を記載します。
すると、その株主のために発行された株券は、無効になります。
万一株券をなくしてしまったら・・・
会社法には、株券をなくしてしまった株主のために、なくした株券を無効にしたうえで、会社に新たな株券を交付してもらうという仕組みがあります。
株券をなくした株主は、まず、会社の株券喪失登録名簿に登録をします。
登録後1年すれば、無くした株券は無効になり、新しい株券が交付されるのです。